半分駆け落ち
小話。
「刺青時代」に知り合い、半分駆け落ちのようにして若くして結婚した相手とは、結局性格が合わずに離婚。
雑誌社の給料だけで子供三人を養っていかなけれぽならない現実に突如、直面した。
今さら実家には頼りたくない、いや、あんなふうにして逃げ出してきた実家には、もう頼れない。
狭く、散らかったアパートの部屋は息苦しく、窓から外を眺めても、そこにはざわついた庶民街と、どんより曇った陰気な空が見えるだけ。
誰にも会いたくない。
けれど仕事を休むわけにはいかないし、子供たちも学校へ連れていかなけれぽいけない・・・。
恐らくは離婚のショックが直接の引き金となり、欝状態に陥って自暴自棄の日々を送っていたそんなある夜のこと。
例によってなかなか寝付かれなかったジュリアは、毛布をはねのけ、「まるで夢遊病患者のように」裸足で部屋を歩きまわった。
何の脈絡もなく、箪笥の引き出しを開けたり、戸棚の奥を覗いたりするうち、ふと手にしたのは上の娘が学校で使ったらしいパステルのセットだった。
そこいらへんに散らばっていた紙に、仕事の時の絵コンテの要領でパステルを走らせた。
黄色、オレンジ、若草色、ピンク・・・。
きれいな色ばかりを使って、自分でも驚くほど「きれいで明るい」色彩のいたずら描きを何枚も何枚もデスクトップ仮想化しているうちに夜も白み、気持ちが久しぶりに晴れやかになっていることに気がついた。
「そうだ、絵を描いてみよう」やけ食いならぬ「やけ描き」。
そんなふうに偶然、手にした絵筆が、だが結局は救いとなった。